風景慕情 其の三

の森の開の下

夜桜 画像 桜の森の満開の下桜を眺めながら土手づたいを歩いていたら、突然気分が悪くなった。

ベッドに入り、布団をかぶって目を閉じても、瞼の裏側で桜の花びらがチカチカと鮮明に点滅している。その夜、久し振りに熱が出た。

桜の美しさには危険な「何か」が含まれている。男と女の狂気を、戦慄な殺人と満開の桜とともに描いた坂口安吾の「桜の下の満開の下」。梶井基次郎は「桜の樹の下には屍体が埋まっている」と告白し、太田光も「憲法九条を世界遺産に」の中で桜の危険さについて触れている。

3つの著書に共通しているのは、その危険な「何か」を「死の表現」として捉えているということ。美しさを修辞する表現の中に「この世のものとは思えない」という言葉があるが、桜の美しさも「この世」から離れた危険な領域にまで達してしまっているのだろう。

京では今週末が最後のお花見日和になりそうだ。春の気分に誘われて酒を飲み、友だちと語り合うのもいいが、決して桜の花びらを長く見つめすぎてはいけない。「恍惚」という危険な毒に誘惑されてはいけない。美しさと同化しようとしてはいけない。

桜の美しさには危険な「何か」が含まれていることを忘れてはいけない。

桜の森の満開の下   お風呂で読む文庫  6   憲法九条を世界遺産に

←おかげさまで急上昇! 今日もクリック願いします。

| | コメント (8) | トラックバック (1)

風景慕情 其の二

京都 西多摩郡 原村

檜原 超急カーブ 画像者言葉の「超(チョー)」を使用した珍しい路面表示が、人口3千人にも満たない都内唯一(島しょ部除く)の村に存在する。  

路面表示の場所は五日市方面から檜原街道を進み、村役場先の橘橋交差点を左折するとすぐ。この場所で発生したオートバイの事故を受けて、地元の警察が若者に事故防止を訴えようと考案した。

約9割が森に囲まれ、冬に凍ることでも有名な払沢の滝(日本の滝百選)やセラピーロードとして認定を受けた都民の森内の「大滝の路」などなど、自然溢れる現代の桃源郷で起こった痛ましい事故。「少しでも事故を減らしたい」と考え、地元警察は全国初の「法定外」表示に踏み切ったのだろう。

「超(チョー)」という言葉は気軽だが、そこに込められている思いは決して軽いものではない。

←ココをクリックすると順位が上がります。 応援よろしくお願いします。

| | コメント (0) | トラックバック (3)

風景慕情 其の一

パーク・ライフ 田修一 著

日比谷公園 パークライフ 画像びえ立つビルの途切れ間に突然、緑が現れる。そんな表現の仕方はあまりに人間本位すぎるだろうか。

コンクリートのジャングルの中で疲れ果てた人間が一時の休息を求めて集まり、また帰っていく都会のオアシス。日常から一歩下がった目線で見ると、何とも皮肉な光景だ。

「パーク・ライフ」の主人公がいつも座っていたベンチは心字池のほとりにある。上から見ると「心」の文字に似ているというが、それを確認できる場所は人間が作った高層ビルの上からだけであろう。

公園を見渡すと、実にさまざまな人が目に付く。黒い背広を着て大きく深呼吸するビジネスマン、初春の優しい光に包まれながら、文庫本を読む老紳士。「パーク・ライフ」とスターバックスのコーヒーを持って日比谷公園のベンチに座り、人の流れをぼんやりと見つめる。

他人と呼ぶにはあまりにも愛しく、それでいて互いに交わることはない。

パーク・ライフ Book パーク・ライフ

著者:吉田 修一
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する

←ココをクリックすると順位が上がります。 応援よろしくお願いします。

| | コメント (0) | トラックバック (3)